泥のような手を取って 離さないで

映画を観終わった後、「はは…」と苦笑したのは、26年間の人生で初めての経験でした。もちろん、この苦笑は映画を卑下するものではなく。「ああ、とんでもない作品に出会ってしまったなぁ」というのが、当時の僕の感想でした。

 


1/19 土曜日

21:50-

兼ねてから「観たい」と言っていた劇場版アニメ『Fate/stay night [Heaven's Feel] Ⅱ .lost butterfly』を観てきました。

 


まず、前の三連休でFateシリーズのアニメをいくつか観た、というブログ記事を書いたばかりですが、ちょうど土曜日の朝に小説『Fate/Apocrypha』を全巻読み切り、映画に向けて最低限の知識と覚悟は持ったつもりでした。

 


以下、ネタバレもありますので、なんの情報も仕入れたくない人はブラウザバックでお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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まず、面白かったです。そこは当然……と言うべきか、言う必要すらないのかもしれませんが。

一応、2018年からぼちぼちシリーズ作品に手を出していますが、どれもストーリーが面白いと感じています。なので、HF2章も物語が面白くないわけないと思ってはいました。

 


展開は衝撃的で、とにかく重くて、観ている側の心が何度も押し潰される感覚でした。それも、いろんな押し潰され方で。

毒でじわじわと冒されていくかと思いきや。

鉄槌でズシンとひしゃげられたり。

ただ、最後になるにつれてどんどん『無』へと近付いていくんですよ、心が。

重力に逆らえないのと同じで、どれだけ足掻こうと下へ下へ落ちて行く。気付いた頃には映画が終わっていて。

飲みかけで氷が溶け切ったメロンソーダの味を確かめて、ああ、これはフィクションだったなと知覚出来ました。

 


何がそこまでさせたか、を言ってしまうとネタバレなので言えませんが、とにかく桜の存在が尊い。そして辛い。

桜は何も悪いことをしてないと思うんですよ、作中で。ただ、彼女は自由を手に入れることは出来ず、果てしない苦痛と虚無の中を生きるしかなくて。

きっと彼女にとって、士郎との出会いはそんな世界から逃げ出す最後のチャンスでもあったのかもしれませんが、映画のラストまで行くと非情さしか感じなく……いや、なんで桜の周りにはあんなクソ親父と兄貴しかいねぇんだ!と憤る気持ちもありましたね。

Fate/Zero』を観ていたおかげで桜が『そういう』存在だと知れていたのが自分にとっては唯一の救いで、それを知らずに観てたら途中で死んでいたかも知れません、僕が。桜~!って映画館の中で絶叫して。

 


あと、ところどころ挟まれる、桜が凛へ抱く感情もなかなか辛かったです。

思い出まで奪わないで……。あれは泣きます。

というかあのシーン見ちゃったら、せめて士郎は桜に渡してあげてよ凛!と思ってしまった。もちろん凛は何も悪くないんですが。

 


また、てっきり僕はどのルートも士郎とセイバーは一緒だと思っていたので、ちょっとびっくりしました。

この感じだと最終章もセイバーの出番はそこまで多くないのかな?

 


戦闘シーンからご飯の作画まで、映像はとにかく素晴らしかったです。同じ会社が作ってるんだよなぁと毎回疑ってしまうのですが……穏やかさと狂気の振れ幅がすごい。

特に戦闘シーンは観てるこっちの生命力をどんどん吸って行くんです。映画観て心臓止まるかもと思ったのも、この映画が初めてだったかも。(僕が年間で4-5作程度しか映画を観ていないので単なるスタミナ不足なだけかもしれませんが)

もう一回観たい。もう一回は作画だけ追い続けたいです。

 


最後にこの映画を締めくくる音楽も良かった。Aimerさんが歌う『I beg you』は、HF2章に相応しい……というか、4分30秒の歌が2時間の本編に負けてない、添え物になっていないんですよ。観た人ならわかりますよね?この感覚。

作詞・作曲・編曲が梶浦由記さんの時点でなんの心配もなく『きっと良い曲に出会える』と思うわけです。また、Aimerさんが歌うというのも『きっと良い歌に出会える』と思うわけです。

映画公開前にyoutubeで観た時から『すごい!傑作じゃ!』と興奮していましたし、ある程度の感動は予測していましたが……。

 


映画を観てからの大サビ、なんか桜のことを想うと辛すぎるんです。

「泥のような手を取って 離さないで」

辛い。とにかく辛い。心の中で嗚咽する自分がいました。

大サビの前、Cメロで少しAimerさんの歌声が穏やかになるんですが、大サビになって狂気っぽさがぐいっと出てくるんです……そこが良い……。ホント、桜の心情を現している一曲です。

僕はiTunesで買いました。多分CDも買います。

(なお、Aimerさんファンとしては同じシングルに入っている『花びらたちのマーチ』もおススメです。そちらはAimerさん自身が作詞されている一曲でHFとは何も関係はないんですが、こちらもほんのり桜の持つ切なさを感じられるフレーズがあるので……)

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観てから丸一日たって、改めて考えるとすごく面白い作品だ、という以前に、この作品元々は男性向けの18禁ゲームだったなと思い知らされました。

ツイッターでは「親子で観たらダメ」というツイートが散見されていましたが、たしかにあれはだめですね笑

最近は女性人気も高まっていますが、その中でちゃんと『やってる』シーンがあるのは好きです。製作側の、一種の覚悟にも思えました。

ファンを広く獲得するなら、グロはともかくベッドシーンって避けても良いと思うんです。それをやるということは『これが受け入れられないなら観なくて良い』という製作陣のメッセージとも受け取れる(あくまで主観です)ので、すごいとしか言えないです。

あ、僕は士郎の筋肉がゴツいのに見惚れてました。そればっか見てました。

 


さらに、僕みたいにアニメやアプリから入った歴の浅いファンでもある程度は楽しめるので、「自分が行って大丈夫かな?」と迷っている方も躊躇わず観に行って問題ないと思います。もちろん、過去放映されたstay nightのセイバールート(無印)、凛ルート(UBW)及びZeroを観ているとより理解が深まって面白さも増えるはずです。UBWとZeroはAmazonプライムで、無印はd アニメストアで配信されていますので、それぞれ入会されている方は是非……!

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映画は興行収入1位、主題歌もオリコン1位を獲得するなど、数字の面でも評価されてるのが見て取れます。アプリとの連動や来場特典など、複数回観てもらう仕組みがあると言えど、僕のような新規ファンが増えているのも確かだと思います。

次回、最終章は2020年の春……そこまでは死ねない……!

というわけで僕はこれから『Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ』を読みます。今年はこのシリーズにとっぷり浸かることになりそう……。お疲れ様でした。