私、痔になりました。
この記事は、とてつもなくお下劣な話が繰り広げられますので、そういう話題が苦手な方はこの記事を見られないよう、気をつけて頂ければ助かります。
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症状が出たのはある日曜日の朝でした。
その日、北海道へ旅行に行っていた僕は、ご飯を食べたあとトイレへ行きました。美味しい朝食を食べ、これからワカサギ釣りだ~~!!!楽しみドコドコドコ……という気持ちで大きい方をしたのですが。
お尻を拭き、便器を見てみると。
なんと、便器に鮮血が。
え?
血便???
紙の方も見ると、そこにはやはり血が。
呆然とする僕。
そして僕は、ある番組を思い出しました。
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それは、今から10年以上は前でしょうか。
『たけしの本当は怖い家庭の医学』という番組を、まだ小学生か中学生くらいの自分は見ていました。その理由はわかりませんが、ホラーな演出と結末の絶望感が好きで、楽しく?見ていた番組の一つでした。
『家庭の医学』の特徴として、初期症状が軽い(ex:虫歯、頭痛)ものばかりで、その症状を放っておくと死に至る、或いは日常生活に支障をきたす病にかかる、という展開が挙げられます。
その中で、初期症状の時点で既に病が進行している、という症例もいくつかあるのです。
その一つが大腸ガンです。
番組内ではだいたい、『便秘』から始まることが多かった印象ですが、ちょうど旅行へ行く数日前、(本当は良くないですが)youtubeに転載されていた大腸ガンの症例を見ており、その時の初期症状が『血便』だったのです。
その方は最終的に『直腸ガン』を診断され、人工肛門での生活を余儀なくされる、という結末でした。
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僕は思い出しました。
もしかしてこれ、ガンでは、と。
トイレを出た後、部屋で仮面ライダーを観ている友達を尻目に、症状で検索。
しかし、やはり可能性として『大腸ガン』がサジェストされるのです。
そこから僕の北海道旅行は一気にブラック化します。ワカサギ釣りを楽しんでいても、ガンかもしれないという不安で竿が震え、そのおかげかワカサギを連れた時も「これが最初で最期のワカサギかぁ……」と内心項垂れていました。
その日が旅行最終日だったのは好都合……だと思ったのですが、日曜日ということで病院はほぼ空いておらず。
不安が募る中、翌日を迎えます。
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もし、これが本当に、ガンだとしたら。
僕はまだ童貞です。
風俗行ったら『手術した方がいいよ』と言われたくらいのすごい童貞です。
せめて一段上の男になりたかったのに。
殻にこもったまま、一生を終えてしまうのか…………。
Oh……
Oh………
Oh…………
『僕は嫌だ!!!』(By 欅坂46 / 不協和音)
不協和音が頭に流れる中、僕は「次ウンコして血が出たら病院に行こう」と心に決めました。そう、もしかしたら、旅行前日に食べたカニの殻で肛門が傷付けられたのかもしれないし……。ガンと決まったわけじゃないよな、ハハ……と、渋々出社します。また、病院に行く場合を想定し、診察を受ける病院を選定し、問診票を書きました。もう、運命は僕の大腸に委ねられたのです。
その日の昼前。
便意を催した僕は、1日ぶりにウンコをしました。
そのウンコには、たしかに僕の血が付いていました。
赤い、赤い、僕の血が。
それを見た僕は一瞬で血の気が引きました。これはもう病院に行かなければ、と。
上司に頼んでコアタイムの16時に退勤し、自宅近くの肛門科へ駆け込みます。問診票を出し、待合室へ。何人か人が待っていたので、その後に僕の名前が呼ばれるのを待ちます。
しかし。
なかなか僕の名前は呼ばれません。
まあ、僕より前に待っていた人が呼ばれるのは仕方ないとして。
僕の後に来た人が、僕より前に診察室へ呼ばれたのです!!!
何も知らない僕は、「なにか重大な病の可能性があり、詳しい検査をする必要があるから」最後まで待たされているのだと推測しました。
死ぬじゃん。
ガンで死ぬじゃん。
まって、まだ童貞卒業してないし。
なんならまだ手術もしてないし。
彼女だって10年も居ないし。
やだ。
死にたくない。
死にたくない!!!
内心、僕は絶叫していました。
そして、病院に着いてから1時間後。
ようやく僕の名前が呼ばれます。
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ベテランの先生がお一人。
気の良さそうな看護師さんがお一人。
そしてガンと疑い続けるど緊張の童貞がお一人。
そんな僕の緊張ぶりを察してくれたのか、先生がいきなり「ああ、血出ちゃったんだね」と軽く一言。続けて「まあこういうのでちゃんと病院来るのは良いことよ、安心しなさいって」と優しく言ってくれたのです。
え、もしかしてガンとかではない?
本当に?
その疑いは残ったまま、普段の便通に関する問診を行います。便秘とは無縁で、多少お腹を壊すこととその日は多少下痢気味だったこと以外はなにも問題はないと思っています。
だからこそ、やはりウンコしたら血が出たというのは不安で。思わず「血が出て、悪い病気だったら怖いなと思って」と本音を吐露したのですが、「ははは、とりあえず診てみようか」と笑ってくれたのです。
この時点で、僕の不安は解消されました。
ああ、ガンじゃない。
なら痔だな?
旅行の時、少しいきんで、肛門を傷付けてしまったのかもしれない。ごめんよ肛門。
そんな気持ちでした。
『じゃあ、そこのベッドへ横になってください』
僕は甘かったのです。
風邪をひいたときは、喉が腫れてないか診てもらうように。
尻から血が出たときは、肛門を診てもらうに決まっています。
え。
看護師さんが慣れた手つきでゴム手袋を装着します。
え。
待って。
看護師さんは僕の動揺も御構い無しに、青い紙が敷かれたベッドへ僕を誘導します。
僕は言われるがまま、ベッドに赴きます。
横になり、お尻が青い紙に乗るよう位置を調整すると、看護師さんから「お尻を出してください」と言われます。
わかっています。
ここで脱ぐんですね。
1年前、風俗で服を脱がせて貰った時とは全くもって種類の異なる羞恥心が僕を襲います。
恐る恐る、ズボンを下ろします。そして、お医者さんに肛門を診てもらえるよう、体は横向きで体育座りの格好をします。
童貞のアレだってちゃんと出して。
未使用のお尻もちゃんと出して。
こんなん、同人でよく見るやつじゃん!!!
と内心叫びながら、僕はお尻に人生最大の力を込めて、アイツが侵入するのを恐れていたのです。
「カメラ挿れますので、力抜いてください」
未使用だった僕のお尻。
そこに、『カメラ』が初めて、僕に挿入されることとなるのです。
「深呼吸して、力抜いてください」
深呼吸……。
すー、はー。
すー、はー。
素直に僕は深呼吸を……深呼吸を続け……。
いや、待ってくれ。
それどころじゃないだろ?
カメラが???
待って!!!
そもそも力入れたくて入れてるわけじゃないし!!!
なんならお医者さんの指示通り深呼吸めちゃくちゃしてますよ!!!
でも力が入っちゃうんでs
問答無用、と、看護師さんの指が、僕のお尻をこじ開けてきました。
「ひぎいっ」と思わずうめき声が出て、異物感を恐れた肛門はぐっと力を込めてしまいます。
「あー、力抜いてくださいね!」
看護師さんの声が聞こえると、僕は「すみません!ごめんなさい!」と謝罪しながら深呼吸を繰り返しますが。
僕の肉壁を弄ぶその手つき。
深呼吸を繰り返す僕は、お尻をクプクプと指で拡張される感覚に「ほうっ」「ふうっ」と、深呼吸に紛れて呻いていました。
僕の混乱を察してか「お尻に何か入る事なんてそうそうないもんね、力入っても仕方ないよ」とお医者さんのフォローが。ありがたいですが、僕は胃を掻き回されるような不快感に襲われ、脳天に走り続ける電撃に耐えながら、深呼吸を繰り返していました。
ある程度僕の肛門が落ち着いてきたのを見計らってか、今度は僕の中にカメラが挿入されます。最新のカメラは細くて、検査時に痛みを伴わないと聞いていましたが確かに、痛みは全然ありません。
その代わりに。
運動したわけでもないのに感じる謎の倦怠感。そして、少しでも気を許せば失いそうになる意識。
何より、下痢気味の緩んだ僕の腸は、カメラの侵攻に耐えきれそうになく。
「あー、下痢気味だねぇ」とお医者さんに言われた時には、漏らしたんじゃねえかと思うくらいの便意に襲われていました。
そういえば、精通したであろう時も僕は「漏らした」と勘違いしていたなぁと。安心してください、検査中にウンコを漏らしてはなかったようです。
とにかく、深呼吸するだけを考える。少しでもお尻に意識が向くと、全身を責められているような、モゾモゾとした不快感と戦うことになります。その時の僕ではそれに耐えきれず、意識を手放してしまいそうで怖かった……息を吸う、息を吐く。それが1分くらい続いて。
そして、「終わりましたよ」のお医者さんに言われ、僕の検査は完了しました。
結果は、切れ痔でした。
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皆さんに言いたいのは二つあります。
ひとつは、何か体に異変を感じたら、専門医に相談すること。
僕は痔でしたが、やはり中には炎症やポリープがあったり、最悪ガンが見つかる方も居るようで。
そうならないためにも、不安な場合は病院へ行きましょう。悪い病気も、早期発見できれば治る可能性が高いので……。
ひとつは、人間は、もしくは男は、検査でもお尻にカメラを入れられると、失神しそうになる可能性があるということです。
なかなかの痴態をお見せしてしまったので、お医者さんに検査後謝ったのですが、「貴方は上等な方ですよ。患者さんの中には、検査中失神される方もいらっしゃいますから」とフォローされました。
え、検査中に記憶飛びそうになったの、アレ嘘じゃないの???
そう言いたかったのですがそこまでは言えませんでした。
個人的な話ですが、一月に主従関係をテーマにした逆アナルもののSSを書いたばかりで、その一ヶ月後に書いた僕がお尻にカメラを入れることになるとは夢にも思っていませんでした。
今なら、もう少しお尻を開発される男側に恐怖を持たせて描写することが出来るのでは、と思っています。ただしばらくは書かないと思います。思い出すので。あの日のことを。
何にしろ、無事でよかった……。
もう少し生きていけそうなので、生きているうちに童貞を卒業出来るよう頑張ろうと思います。
以上、痔の治療の一環としてウォシュレットを初めて使ったら、最初「ほわっ」と個室で喘いでしまい、隣に入っていた人に笑われた人間の、肛門検査レポートでした。