「藤巻亮太 弾き語り LIVE TOUR 2019 "In the beginning"」 in Zepp Tokyo ライブレポ

令和への改元を2日後に控えた4月29日。

藤巻さんのライブ参戦は、3年ぶり。
転職後は初めての参戦。
今回のライブは、個人的に特別な思いがありました。
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2016年10月。
川沿いを徘徊し、危うく入水しそうになった(らしい)僕は、
気付くと実家である大阪に戻っていました。

9月にうつ病と診断され「死にたくないなら会社を辞めてください」と言われた記憶はあります。
ただ、その時の僕は「会社に行きたくないのを甘えにしているだけ」と思い、
当時お世話になった上司に診断書を渡した時も「僕は働きたいんです」なんて言ってました。

人って怖いですね。
その日、Twitter,Facebook,LINEで「今から死にます!みんな今までありがとう!」みたいなメッセージを送っていたようで。
でも僕は全く、そのことを覚えていなくて。

結果、僕はその会社を辞めることになり、今の会社で元気に働くこととなったのですが、一つ心残りがありました。
実は、藤巻さんのライブを5日後に控えていたのです。
その年はアルバム「日日是好日」の発売年であり、そのアルバムを聴いていた僕としては、「今年は絶対ライブ行きたい」と息巻いていました。
しかし、そうなった以上、ライブに行けるはずがなく。
ライブ当日は布団の上で、いつか藤巻さんのライブに行ける日が来ることを願いながら眠っていました。

転職後もチャンスはありました。
しかし、何故か踏ん切りがつきませんでした。
トラウマなんですかね。
別に、行かないから死ぬってわけではありませんし、他に好きなアーティストやアイドルも居るし。
そう思っているうちにだんだん、藤巻さんのライブへ行く、という概念は僕から失われていきました。

転機は2018年。
前年にリリースされていたアルバム「北極星」を聴き、意識が一変します。
北極星を聴きたい。生で聴きたい……!
しかし、タイミング悪くツアーは開催されておらず、僕は次のツアーは参戦しようと決心しました。
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藤巻亮太 弾き語り LIVE TOUR 2019 "In the beginning"」 in Zepp Tokyo

それは、単なる3年ぶりのライブ参戦ではなく、僕にとってのリベンジを兼ねていました。
運悪く、喉の調子がおかしかったのですが、熱や咳はなかったので会場へ向かいます。

Zepp Tokyoは初めてでしたが、入ってすぐ「ああ、ライブハウスだ!」とテンションが上がりました。
色んなアーティストの出演情報が掲載されているポスターに、ワンドリンクを交換するカウンター。
コーラを受け取った僕は、席へと向かいます。

場所は27列目。恐らく最後列が30列だと思われるので、ほぼ後ろ。
傍に出入り口があったので、ライブ中はちょっと気になるかも……と懸念はしつつ。

ファン層は、自分より年齢が上の方が多く、7:3……いや、8:2くらいで女性が多い印象。
ライブハウスに席が用意されているのも、なんとなく頷けました。

ちょうど4月にリリースされていたセルフカバーアルバム「RYOTA FUJIMAKI Acoustic Recordings 2000-2010」を聴きながら、開演時間を待っていました。
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■電話
初っ端から、レミオロメン初期の代表曲。
それを弾き語りで。
聴こえるのはギターと、藤巻さんの声だけ。

1曲目なのに、泣きそうになりました。
めちゃくちゃ上手。席は後ろの方でしたが、全身に声が、ギターの音色が染みわたる。

昔、レミオロメンって歌下手でしょ、と言って来た友達に聴かせてあげたい。
今ボーカルめっちゃ歌うまいから、って。

3年前でも、藤巻さんの歌声はレミオ時代と全然違っていました。
迫力ある声量と、甘さとハスキーさが混ざった高音。

でも、今はもっと上手くなってる。

目を閉じて、体をほんの少し揺らしながら、僕は電話を噛みしめるように聴きました。

■マスターキー
3rdアルバム「北極星」より。
北極星で1,2を争うほど聴いた1曲をついに生で聴ける感動。
ギターをかき鳴らして歌う藤巻さんの姿は、とてもかっこよくて。

「鍵穴に合わすように 何度も自分を変えていける」

昔、パラダイムという曲で「鍵穴の方が変わってしまった」と嘆いていた人と同一人物の歌とは思えない。

■指先
ソロ活動の初期から、ライブでは度々歌われているバラード。
何度聴いても飽きない。安心感と、そんな安心を良い意味で裏切っていく藤巻さんの歌唱力。
ここまで3曲はしっかり聴かせるゾーンでした。

■永遠と一瞬
ここからドラムの方が参加。
レミオロメンで1番好きだった歌を、ついに生で聴く日が来ました。

なんだろう。
かっこいい、というより、熱い。
キーボードやストリングスの類がないだけでなく、原曲から大幅にアレンジされていることで、
「全く別の曲」を聴いている印象でした。

ありのままでいることは難しい、しかし、容易い。
原曲では思春期の青年が抱える青臭い、不安定な葛藤が表現されている印象ですが、
ライブで聴いた永遠と一瞬は、そんな青年の背中をぐいっと押してくれるような力強さがありました。

■五月雨
永遠と一瞬に並ぶ、ファンの人気曲。
さらに、ここからベースが加わり、予想していなかった3ピース体制に。

え、これ、レミオロメンじゃん。って。レミオロメンではないんですが。
弾き語りライブだからゆっくり聴いとくか、って思ってたら、こりゃ立って応援する奴だ!と立ち上がろうとして。

あれ、皆立たないの???

恐らく、周囲の方々も「弾き語りでやるんじゃないの?」と困惑されているのでしょう。
とはいえ、前方の席は皆スタンドアップ。そうだよね、3ピース体制の五月雨なんて、もう聴けないかもしれないもんね。

ホントはもっと聴き入りたかったのに、モヤモヤした気持ちを抱えたのは悔しい。
でもありがとう……死ぬ前にこの形式で五月雨が聴けて幸せです。

■Sakura
MCでまさかの「ここからはバンド形式で」宣言。
僕は大歓迎でしたが、ライブ終わりに「弾き語りだって聞いて楽しみにしてたのに」という声を聞いたので、
そういう人にとっては厳しいライブだったのかも。

まだ大阪にいた頃、そしてレミオロメンが初めて紅白歌合戦に出場することになった年。
ローカル番組を良いことに、「最近の紅白は出ている人がわからない」と喚くご老人コメンテータがいらっしゃいまして。
言っておきますが、この年レミオロメンは、Sakuraが配信で大ヒットして、ベスト盤もめちゃくちゃ売れたんですよ???
むしろ知らない方が恥ずかしいのでは???(という煽り)

そんなことを思い出しながら。
ストリングスのないSakura、ロックでした。
思っちゃいけないと思いつつ、3ピースのレミオロメンが好きだったんだなあとしみじみ。

■南風
ここで南風か!!!!
ちらほら立ち上がる人も居ましたが、自分の後ろが全然立たないため立つ勇気が出ず。

ホントこの曲は盛り上がる。
座りながらワイパーと言う、地味に初体験もクリアしながら。

■紙飛行機
良い意味でレミオロメン時代を振り切った印象がある「北極星」収録の1曲。
「南風」の後にこの曲を歌えるのが、今の藤巻さんが持っている「自信」なのかなと。
このまま1ブロック、レミオ時代の盛り上がる曲で固めたってファンは文句ないと思うのですが。
引き続き座りながら応援するスタイルで、盛り上がりゾーンは終了します。

■昭和
高校時代は親へとにかく文句ばっかり言っていたけど、大学進学後に一人暮らしをして、初めて分かる親のありがたみ。そんなことをMCで話されておりました。

わかる。僕は社会人になってから初めて一人暮らしを経験しましたが、5年目に入った今もたまに、
ご飯作ってくれる人が居たらなあ、なんて気持ちになります。
というか、「当たり前」と思っていることほど、失ってからかけがえのないものだったんだと気付かされるんですよ。
口酸っぱく怒られたことの意味を知らず、一人暮らしを始めてその意味を知り。

しんみりしたMCからこの曲は卑怯。

「愛された分まで強くなれ 言い聞かせながら旅は続く」

強いですよね、このフレーズ。
この曲のルーツを知れば、(言い方は悪いですが)そこまで壮大な歌ではないとはわかるはず。
しかし、「旅」という言葉が随所に使用されていることで、ちょっと幻想的な、ファンタジックな雰囲気を醸し出します。
僕は藤巻さんの、この手の歌詞が大好きです。
ありふれている、誰もが抱いている感情を、ちょっと特別な雰囲気に昇華させる感じが。

■春景色
リリース時はロック調だった曲が、アレンジ版はバラードに。
といっても、春景色の原曲はバラードで、CDリリースの際にアレンジされたので、ある意味原曲をそのまま聴いている状態です。

歌詞は知っていましたが、バラードで聴くとより「歌の主人公が抱える不安」が助長されていました。

「重ねた強がりが首に巻き付くから 息も出来ずに彷徨うよ」

いやあ、良い歌詞だ……。

北極星
名曲、いや、神曲
藤巻さんのソロ曲で一番好きな曲は?と聞かれれば、間違いなくこの曲を勧めます。
歌詞、メロディ、楽器のバランス。
どれを取っても要らないものがない。
もっと知られてほしい。ってか知らない人は聴いて。サブスクリプションも解禁されてるから(少なくともAmazon Musicは)

前に北極星は「オタクが推しCPのイメージソングとして採用するのにぴったりだよ」という曲で記事にしたのですが、
聴いていて、現在進行形で推しているCPにぴったりだなあと……。

オタク界隈は昨年、「Lemon」(米津玄師さん)のヒットにより「アゲハ蝶(ポルノグラフィティさん)の再来」と言われ、
夢ならばどれほど良かったか、攻めか受けどっちかに言わせたくなりがちな年だったのではと思います。

そんな仲、僕はこの曲が一番、創作するのにぴったりな一曲で。

「また会おうね 元気でいて」

ラストサビの冒頭。この歌詞だけでは、まあよくあるフレーズですが。

橋のない川を 船のない海を 風のない空を 光のない森を」
「超えてゆける 勇気をほら 僕らは心に宿して」

あああ……。
そう、「僕」と「君」の間に隔たれる、大きな大きな壁。
でも、僕らはきっとそんな壁を乗り越えていける。
だから、僕は行くよ、いつか君とところへ……。

みたいな。
あ、これはただのオタクの妄想です。
ホント、聴いてください。お願いします。

日日是好日
2ndアルバム「日日是好日」表題曲。
直前のMCで禅の話になり、「このライブが楽しめなかったら、観てる人たち自身の責任ですよ」と、
禅の教えを説かれ。

当時、心をすり減らしながらも毎日この曲を聴いて耐えていました。
結果、耐えられなかったけど。

ついつい僕らは「過去」「未来」に目を向け過ぎて、「現在」を見過ごしてしまう。
もっと「現在」を大切に生きていこう、という曲ではあるのですが、
色んな思いがこみ上げてきて、泣きそうになりました。

■花になれたら
北極星から藤巻さんのソロ曲が続く。
ソロ曲は「ハロー流星群」「かすみ草」等、レミオロメン時代のファンが大好きな盛り上げ曲がいくつかある中、
「花になれたら」は個人的にオーソドックスだと思っている1曲。
前述の「日日是好日」にも収録されているため、この曲も現在を大切にしよう、という曲ですが。

「君が笑ってくれたなら 君が求めてくれたなら 何度でも僕は甦る」

ここで「咲き誇る」とか「元気になる」みたいなライティングをしないところがニクい。
あと、自分のワイパーだったり手拍子だったりが激しくなってきて、そろそろ立ちそうな予感。

■ゆらせ
所謂「タオル振り回す系」の曲。
タオル持ってねえ……だって弾き語りって聞いたから……。

Jリーグチーム、ヴァンフォーレ甲府創立50周年を記念して作られたアンセム
藤巻さん自身もサッカー好きだしね。お互い幸せなコラボだったんじゃないかなあ、なんて。
僕は拳突き上げて藤巻さんを応援してました。タオルないので。

■雨上がり
ここしばらく藤巻さんのソロ曲が続いておりましたが、ここに来てまさかのレミオ曲。
それも、デビュー曲の。

この時、「ここで立ちあがらないでライブ楽しめなくてもお前のせいだぞ」と心の声が。
そうだ、後ろの人とか関係ない。僕は藤巻さんのライブに来たんだと。

もう、やっぱりライブは、こうじゃないと。
立ち上がって、体を振って、声出さずに歌って。

恐らく、このライブで一番盛り上がった1曲。
でも、なんとなく。
これから雨上がりは、聴く機会が減るのかなあ、なんて。
これは勘ですが。

だとしたら、貴重な回だったかもしれない。

■僕らの街
静岡・山梨間を繋ぐ高速道路のCMソングに起用されています、とMCで発表され(既にCMは流れているようですが)。
なんかこう……仮にでもロックバンド出身のアーティストですから。
こういう、インフラ系の企業タイアップって、アーティスト側が嫌いそうなイメージあるじゃないですか?
高速道路なんて無駄!森林破壊!総理は辞めろ!(なんで!?)みたいな。
(この時、レミオロメンと時を同じくして人気が出た某バンドのボーカルを思い出したわけではない)

でも、話を聞くと、ちゃんと意味があって作られた高速道路なんだなあと。
そこに藤巻さんの想いが乗る歌を聴き、タイアップとしてもちゃんと意味があるものになっていたんだと思い知らされました。

一時期、もう歌手じゃなくて登山家じゃん、とdisっていた時期がありました。
ごめんなさい。色んな経験を経て、藤巻さんは物事を俯瞰して見ることが出来るようになったんだなあと……。

僕も旅に出ようかな。
あと、実家帰ろう、って思いました。

ちなみに、「地元は好き?」と藤巻さんがMCで振ってくれても反応が薄かったので、二度目の「地元は好き?」に「大好き!」と答えたのは僕です。

■もっと遠くへ
アンコール1曲目。
東京オリンピックを翌年に控える中、北京オリンピックのフジテレビ系テーマソングに起用されたこの曲をチョイスするのは趣があります。
とにかく、曲が壮大。3ピースのはずなのに、バックにもっと演奏している人が居るんじゃないかと疑うくらいに。

ちなみに、埼玉西武ライオンズに所属する源田壮亮選手がこの曲を入場曲で使ってくれています。
源田たまらん。

■粉雪
最後は弾き語り形式で。
さらに、マイクを使わずに。

会場が聴き入っていました。

なんやかんやで「粉雪」は名曲。
CDの売り上げを基準にするのは時代遅れですが、
ロックバンドがシングルで80万枚以上売り上げたのって、レミオロメンが最後になるんじゃないです?
そう考えると、レミオロメンはすごかったなあって。

平成が終わり、令和を迎え。
いつか一世代下の後輩とカラオケに行くってなった時、
きっとこの曲も「おじさんたちが良く歌っている曲」になるんでしょうけど。

それでも僕は死ぬまで、「粉雪」を聴き続けるんだろうなあ、とか。

あっという間の2時間。
でも、かけがえのない2時間。

レミオロメン、そして藤巻亮太
二つの魅力が、存分に体へ染みわたりました。
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27歳になって1ヵ月。
去年も自身へ対する焦りはあったのですが、今年に入ってからそれは顕著になり、
誕生日を迎えて以降はさらに大きくなっていきました。

自分は何がしたいんだろうか。
このままでいいんだろうか。

不安で、でも、何も見つからなくて。

夢を形にする人が、周囲には段々増えていく中、
中々自分が「やりたい」と思っていることが形に出来ずにいて、
それを段々人や環境のせいにするようになって。

それでいいんだ。
それを、受け入れるために使うというよりは、自分を諦めるように使い始め。

ライブが終わって二日。
ちょっとした虚無感に苛まれていた僕ですが。

そうじゃないなあって。

まずは、自分はちゃんと頑張っているんだって認めてあげたいし、
その上で新しいことに挑戦していきたい。
それは無茶なことかもしれないし、無謀なことかもしれないけど。
一回きりの人生だから、「やってみたい」と思ったことへ、素直に挑戦していきたいなあ、って。

そのために、「無駄だった」って時間を使いたくないし、
しんどいけど全力で進んで行きたい。

まあ、オリンピック出ます!とか、ノーベル賞取ります!とか、そういう大それたことではないんですが笑
ただ、そろそろ自分と、自分の環境を大きく変えてみてもいいかなあ、なんて。

ずっと思っていて、それで良いのか悩んでいた自分にとって、ちょっと勇気を貰えたライブになりました。
ありがとう、藤巻さん。これからも藤巻さんのこと、応援し続けます。