横尾渉という男を応援したい

横尾渉という男は、良くも悪くも、男らしさを体現している存在だと思う。

 

踊って歌えないアイドル

こんなことを言ったらファンに殺されそうだけど、横尾さんは決して、パフォーマンス力が高いアイドルではない。歌やダンスが上手ではないし、お芝居で結果が残っているわけでもない。昨年末、グランメゾン東京で知名度と評価をあげた玉森くんを見ていると、嬉しい気持ちの反面、もし横尾さんに演技力があれば、あの料理人の役は横尾さんに来たんじゃないかと、僕は思ってしまった。

でも、横尾さんには他のメンバーに負けない強みがある。料理人の役をやってほしいと思わせるくらいには料理が得意だし、俳句なんかは、横尾さんが切り開いたジャンルだと言っておかしくないだろう。一人でレギュラー番組を持ったこともあるし、「Kis-My-Ft2」というアイドルグループを知らずとも、横尾さんを知っている人は必ずいる筈。僕はそんな横尾さんが、キスマイの中で一番好きな男だ。

そもそも、僕がキスマイをデビュー当時から応援していたわけではなく。深夜に放映されていた「キスマイBUSAIKU!?」を見始めたことが、応援のきっかけだった。

同性として、考えたものが女性たちにバッサバッサ斬られていくのは他人事ではなく...笑 辛さも感じながら、キスマイの皆さんが見せてくれる個性を楽しみにしていた。そのうち、フロント3人(藤ヶ谷くん、玉森くん、北山くん)はドラマで、後列でも宮田くんをバラエティ番組で見るようになり、キスマイというグループの知名度が底上げされて行った。その時点では、やはり露出が多いメンバーに興味が湧いていて、特に宮田くんなんかは、僕がオタクということもあって親近感があった。横尾さんには「中途半端な人」という印象が残るだけだった。

 

『裸の時代』で知る、擦れた過去

社会人二年目の、何をやってもうまくいかない時、僕はキスマイ7人のインタビューが載っている「裸の時代」という本を読んだ。

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各メンバーの魅力が詰まっている中、横尾さんのページだけは、魅力、という言葉がふさわしくなかった。むしろ、横尾渉という人間性を曝け出している文章は、愚直という表現が正しかった。

詳しくは語らないが、彼のインタビューを読んで横尾担を降りたファンは相当数居ると思う。僕も彼の(昔の)振る舞いは理解できなかった。ただ、過去の過ちを糧に成長した「横尾渉」という男は、キスマイのことを何よりも考える男になっていた。

インタビューで語られていない部分も含め、おそらく彼は沢山のプライドを捨てたのだろう。 男は良くも悪くも、プライドを高く沢山持とうとする。そして自分が上手く行かないと、上手く行っている奴や成功を目指して努力する人間を僻むようになる。それがループしていくと、本人も知らないうちに、周囲の士気を下げる事ばかりしてしまう人間になってしまう。横尾さんもそういう人間だったのかなと、僕は思う。

ただ、僕はそこまで言ってしまう横尾さんの愚直さに惹かれた。そして、自省する強さに憧れた。男として、横尾さんはめちゃくちゃカッコ悪くて、めちゃくちゃカッコいいと思ったのだ。僕も当時、自分の理想像に追いついていないことに焦りを感じていた。そのせいで周囲に八つ当たりすることがあり、自分でも止めなければと思うことがしばしばあった。その後仕事を辞め、自分の将来を考え直した時、裸の時代の横尾さんのインタビューを読んで、自分を変える勇気を貰っていた。そのくらい、あのインタビューにはエネルギーがあったのだ。

 

不器用な横尾さんが大好きだ

長ゼリフでもないのに噛み倒し、音痴を弄られ、横尾さんは愛されキャラへと変貌していく。でも、年始にプレバトの俳句ランキングで 1位を取ったように、マグロ解体師の資格を取ったように、やるときはやる男でもある。

ちょうど、プレバトで千ちゃんが横尾さんの俳句の結果を「いつも頑張っていた」と喜び涙しているのが全てを語っている。努力家で、与えられた役目を全うしようとする横尾さんの姿勢の表れだ。とは言え、それを本人がベラベラ言わないところに、横尾さんなりの美学があるのかな、とか思ってしまう。

おそらく、役者としての横尾渉を積極的にテレビや映画で見ることはないだろう。ただ、愚直な努力家である横尾渉はこれからも、マグロや俳句以上の「何か」を見せてくれそうな気がしてならない。

そして、同じ男として、沢山間違ったり迷った経験の果てに居場所を見つけ、そこに居続けている姿に、とても力を貰っている。

だから、最初は「歌もダンスも出来ない」なんて言ってしまったけど、いつか生で横尾さんに会えるように、自分ももっとキスマイを応援しようと思う。そして、ライブ会場で、明らかにガラガラの低い声で「横尾さん!」と叫んでみたい。自分が貰った勇気や元気を、ファンとして伝えるために。