10年代後半の「奇妙」に見る新機軸

2020年。
新型コロナウイルスの感染拡大により、奇しくも放送延期となってしまった「世にも奇妙な物語」。
実は、今年で放送開始から30年を迎えました(パチパチ)

今日は、そんな奇妙の、ここ最近の作品(2016~2019年の作品)について、僕が感じていたことを纏めようと思います。

ジャンル傾向について
https://www.fujitv.co.jp/kimyo/list2015-2019.html
公式ホームページのあらすじに載っている作品より、
「ホラー系」「ブラック系」「コメディ系」「感動系」の4つに、主観で作品を纏めてみました。
なお、「ホラー」「ブラック」の分け方として「作品に何かを示唆・風刺するメッセージ」を感じた場合は「ブラック」に、純粋に恐怖を感じた作品を「ホラー」に分けました。
また、「最後に笑えた」作品は「コメディ系」と分類しましたが、内容が笑える展開でも(登場人物にとって)後味の悪い展開になるものであれば「ブラック」に位置付けております。

▼ホラー系[5作品]
「寺島」(17.秋)
「クリスマスの怪物」(18.秋)
「さかさま少女のためのピアノソナタ」(19.春)
「恋の記憶、止まらないで」(19.秋)
「ソロキャンプ」(19.秋)

▼ブラック系[14作品]
「美人税」(16.春)
「夢見る機械」(16.春)
「通いの軍隊」(16.春)
シンクロニシティ」(16.秋)
「捨て魔の女」(16.秋)
「夢男」(17.春)
「一本足りない」(17.春)
「運命探知機」(17.秋)
「夜の声」(17.秋)
「フォロワー」(18.春)
「不倫警察」(18.春)
「脱出不可」(18.秋)
「あしたのあたし」(18.秋)
「鍋蓋」(19.秋)

▼コメディ系[9作品]
「クイズのおっさん」(16.春)
「貼られる!」(16.秋)
「車中の出来事」(16.秋)
「カメレオン俳優」(17.春)
「フリースタイル母ちゃん」(17.秋)
「幽霊社員」(18.秋)
「マスマティックな夕暮れ」(18.秋)
「大根侍」(19.春)
「恵美論」(19.秋)

▼感動系[6作品]
「妻の記憶」(17.春)
「明日へのワープ」(18.春)
「少年」(18.春)
「しらず森」(19.春)
「人間の種」(19.春)
コールドスリープ」(19.秋)

▼???[1作品]
「永遠のヒーロー」(19.春)

全35作品のうち、半数以上が「ホラー・ブラック」系の作品となり、
よく言われがちな「怖い作品が減った」という言説には、反論できるかな、と思います。
もちろん、「美人税」「運命探知機」のように、コメディと取れる作品はありますが、
それでも、奇妙ブランドにおいて「恐怖」というジャンルの強さを感じました。

 

岩田和行監督の存在感
シンクロニシティ」「クリスマスの怪物」「さかさま少女のためのピアノソナタ」「恋の記憶、止まらないで」
以上4作品の演出に関わった岩田和行監督の評価が、作品のクオリティに厳しい古参ファンの間でも高まっております。

個人的には、岩田監督が演出で関わる作品で面白くない、と思ったことがほぼないので、
むしろ「今更では???」という気持ちも少なからず…。

技術的なことはわかりませんが、岩田監督の演出は、
初見だと「岩田監督の作品」と判別できないところに魅力があるのかな、と思います。

奇妙で言いますと、落合正幸監督や星護監督、最近では松木創監督のように、
絵作りで「○○さんの演出だな!」とわかるところに、一種の楽しみがあるのかな、と思っています。
ただ、岩田監督の作品からは、一目見て「岩田監督の作品だ!」とはなりません。
とはいえ、全部見終わった時、特別編の中で印象に残った作品を挙げるとき、
岩田監督の演出作を挙げちゃう……そんな不思議な魅力を、岩田監督の作品から感じております。

岩田監督の持ち味は、要所要所のツボを押さえた演出にあると思ってます。

シンクロニシティ」「クリスマスの怪物」では、主人公が破滅エンドへ向かっていく瞬間にそれぞれ「ケセラセラ」「きよしこの夜」を流す皮肉っぷり。
極上のホラー作品「恋の記憶、止まらないで」でも、地方のローカルCMの不気味さがしっかりと生かされておりました。

さりげない、でも、怖い・厭だ、と感じるツボを確実に突いてくれる岩田監督、
これからも奇妙作品の中心人物として、とっても楽しみなお方だな…と思っております。

 

「風刺」や「トレンド」への筋の良さは健在
一方で、奇妙ブランドの魅力の一つは「社会風刺」だと思います。
奇妙作品の風刺は、権力や特定の人物を揶揄するものだけではなく、作品を受ける僕ら自身が陥っている罠に気付かせてくれる側面があると常々思っています。

10年代はSNSを通じた「正義」についての風刺が多かったように見受けられます。
特に「フォロワー」「不倫警察」「脱出不可」あたりは顕著で、新型コロナウイルスで自粛が始まった2か月間で、
2年前に奇妙な世界で語られていた恐怖を、今味わっているような錯覚があります。

また「捨て魔の女」では、断捨離し過ぎて破滅に向かう主人公の話が展開されましたが、こちらも新型コロナウイルスの影響で、医療現場や役所など「無駄を縮小した弊害」が取り正される事態となっていたりします。もちろん、断捨離の話がここまで大きいものを揶揄していたわけではないと思いますが、筋の良さは、奇妙ならではだな、と。
(あと、「100日後に死ぬワニ」の流れが「大予言」に似ている部分があり、そこで世にも奇妙な物語がトレンドに上がったのも面白かったです)

加えて、「クイズのおっさん」「フリースタイル母ちゃん」等、その時々のトレンドを察知する能力はもちろん、今では地上波でも拝見する機会が多くなった声優さん(フォロワー・永遠のヒーロー)・youtuberさん(脱出不可)の起用も積極的に行ってきた部分が、奇妙ブランドの視野の広さを感じずには居られないところです。

 

「怪しさ」を見せる感動系ジャンルの確立
個人的には、怖い作品群の中でもホッとする作品があると、一つの傑作選で見やすくなるかな、と思うのですが、今後はこのジャンルが鬼門になってくるのではと感じております。

「妻の記憶」「少年」「人間の種」等、奇妙らしさを持ちつつ、心にスッと落ちていく感動作品は見ていて癒されたり、心を揺すぶられることがあって好きなのですが、10年代後半については、「一筋縄ではいかない」感動作品も少なからずあったなあと思います。

それが「明日へのワープ」「コールドスリープ」の2作品です。
あらすじを読んだときに多少でもバッドエンドを想像してしまうと、
「裏切ってほしいけど、安易にブラックな終わり方もしてほしくない」というワガママが顔を出すんですが、
こと、この2作については、ヒリヒリとした緊張感を持続させながら、最後はホロっとしちゃうエンドを迎えたなあ、という印象でした。

10年代に限って言いますと、「ベビートークA錠」という作品が、バッドエンドになるかと思いきや良い話だった、という作品に当たるかと思います。ただ、緊張感が行き過ぎて、最後の感動シーンがまともに見れなかったのが正直な感想でした。
上記を踏まえると、「明日へのワープ」「コールドスリープ」のハラハラ感は「いい塩梅」だったんだな、と。
特に、「明日へのワープ」で、主人公が十数年も未来へワープしていた(実際は幻覚でしたが)シーンなんかは、見てて主人公の「終わった…」感が凄くて。

ちょっぴり毒のある感動作品って、奇妙でしか味わえないと思っているので、
これからも、そういう作品を期待したいなと思います。

 

「惜しい作品」をゼロにしてほしい!
基本、10年代後半は面白い作品が多かったと思うのですが、
「脱出不可」「永遠のヒーロー」は勿体なさを感じました。

「脱出不可」に関しては、個人的には最後の演出が決まらなかったところが勿体ないと思う原因だったので、
そこを変えてくれればよかったのに…という程度なのですが。

「永遠のヒーロー」は一種の問題作であり、今後の新機軸の一つになり得る作品だったと思います。
いわゆる「バーチャルリアリティ」系にあたるのかな、とは思いますが、
「怖い話」とも「感動できる話」とも取れない、もやもやした終わり方だったので、パッと見たら「何の話なんだ」という印象になっちゃうな…とは思います。
とはいえ、過去の奇妙の類似作品と違い、「ゲームのキャラクター」という扱いはかなり良い線を突いていたんじゃないかな、と。

ここ数年で、日本のカルチャー産業が海外にも進出する規模になる中、
一方で「二次元キャラクターの投げ売り」感が辛い、と思う瞬間が僕にはあります。
「永遠のヒーロー」には、そういう二次元的目線が少なからず入っていて、やりようによっては怪作になったと思うんですが…。
でもそのうち、二次元のキャラクターやAIキャラクターとかに返り討ちに遭っちゃうクリエイター、みたいな話も出てきそうな予感がするので、こういう切り口の作品が増えてくれてもいいのかな、と思います。

 

「この人に出てほしい!」という希望
なんやかんやで、キャスティングに一喜一憂するのが奇妙クラスタ
そこで、個人的に出てもらいたいな、と思う方を書きましたので、関係者の方々、参考にして頂ければと思います。
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鈴木亮平さん
見たい。コメディ系ではっちゃけてる作品に出てほしいです。

田中圭さん
見たい、その2。最後はめちゃくちゃ悪い顔するヤベエ奴の話に出てほしいです。

吉高由里子さん
主演級で見たいと思ってます。出てくれたら何でもいいです。

長澤まさみさん
コンフィデンスマンの流れで出てくれませんかね(どういう流れなんだ)

浜辺美波さん
「大根侍」に出たんですけど、個人的にはめちゃくちゃ狂気的な…「捨て魔の女」的な女役やってほしいんです…わかってくれ同志よ…
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なかなか、先の見えない状態ではありますが、世にも奇妙な物語がこれからも末永く続くことを願っております…!