2021年の世にも奇妙な物語を振り返る

昨日、今年の世にも奇妙な物語 秋の特別編が放映されました。

ある種、思い切った4作品で、賛否はありますが、僕としては「記憶に残る」という意味では、一定の水準はクリアされた回だったのでは、と思います。


今回は、「夏の特別編」「秋の特別編」を合わせて、今年の奇妙作品の総評と今後の展望を記して行こうと思います。


【ジャンル傾向について】

■恐怖系

・デジャヴ

・スキップ


■サスペンス系

・あと15秒で死ぬ


■コメディ系

・成る

・優等生


■感動系

・三途の川アウトレットパーク

ふっかつのじゅもん

 


「優等生」「ふっかつのじゅもん」はオチが結構ブラックですが、このジャンル分けが正しいかは、個人に委ねるということで一つ。

「春の特別編」がバランス良い編成だったことに対し、「秋の特別編」は全編バッドエンドという尖り具合。スタッフ陣の「新しい奇妙を作っていこう」という気概を、僕自身は感じていました。


【作品の感想】

では、ここからは各作品の総評をば。

 

今回は

・自分には合わなかった作品

・面白かった作品

・想像を超えて面白かった作品

の三つに分けて記載します。

 


■自分には合わなかった作品

『デジャヴ』

夏の特別編の3本目。気合の入っていた作品ではありましたが、消化不良気味に終わってしまった惜しい作品でした。


「8分間」チックな展開と、「あけてくれ」のようなオチ。

専門的なワードが飛び交うのはめちゃくちゃ好きなのですが、どこかでボタンを掛け違えてしまった印象が強かったですね。

個人的には、お父さんが産業スパイに殺されてしまって救うことが出来なかったエンドか、あの後の純粋なハッピーエンドで終わらせて良かったんじゃないかなと。

とはいえ、デジャヴオチを目指して構成されたであろう作品のため、あのオチを否定するのも如何なものかとは思い。。。なんとも言えません。。。こればかりは好みの問題ですね。


また、昨今の番組の編成上、特定の作品を1時間ドラマクラスのボリュームにする必要がある影響も強いのかと。ドラマ性があったので、奇妙作品として、ではなく、単発のドラマとして楽しむ分には問題なかったかもしれないですが。

合わない作品、としましたが、意欲は十分感じたので、今後も挑戦は続けていってほしいです。

 


『スキップ』

秋の特別編の1本目。よくある、主人公が特別な力を手に入れて調子に乗っていたら破滅に向かってしまうタイプの作品。。。ではあるのですが。

ストーリーのやりたいこと、演出のやりたいことがお互い邪魔をして、作品の面白さが伝わってこない、残念な作品でした。

自分には合わなかった作品、とすることも考えたのですが、不用意でかつ怖くない演出(不気味とも言えない、何かを思わせたいんだろうな、レベルのもの)で評価を下げる、というパターンが常態化しているので、これはなんとかしてほしいところ。

正直、他の監督の演出で見たかったです。

 


『金の卵』

秋の特別編の4本目。奇妙な卵の力に取り憑かれてしまった主婦が破滅に向かっていく。。。かと思いきや、自分の思い込みでした。。。と思ったらやっぱり。。。という展開のお話。シンプルで悪くはないのですが、近年だと『一本足りない』のような、ワンシチュエーションで狂いの極みを見せてくれた作品が類似であったので、インパクトに欠けたかなあと。

また、他の作品に比べてボリュームが少ないのも、不満を感じたところに。。。

コメディ系はそれでも良かったりしますが、ブラック系の作品なら、もう少しハラハラドキドキ感を楽しみたかった。。。

 


■面白かった作品

『あと15秒で死ぬ』

夏の特別編の1本目。声優の梶裕貴さんが死神役で出演することでも話題を集めた作品です。


原作付きということもあり、ストーリーは安心して、かつ最後まで楽しむことができ、演出もこれまで奇妙作品に数多く関わってきた城宝秀則監督がそつなくまとめてくれていました。


この作品に関しては「まとまっている良作」で「面白かった」という評価であり、それ以上言うことはないのですが、強いてあげるなら1点。「間合い」でした。


梶さんが奇妙に出ると聞いてめちゃくちゃ楽しみにしており、死神の演技も素晴らしかったのですが、この作品に帯びている独特のテンポ感が、僕にはもったいなく感じてしまいました。

これは、映像系(俳優さん)とアニメ(声優さん)の演技の仕方に理由があるのだろうと推測しています。

マイナス要素にするにはあまりにも些事ですが、「3つの願い」にランプの魔神として出演されていた滝藤賢一のようなバイプレイヤーが死神だった世界線も見てみたかったなあという気持ちがありました。


これは、同じ違和感を覚えた人がいたらぜひ反応してほしい、という思いで書きました。自分だけの違和感だったほうがいいのですが。

それはさておき、昨今は声優さんがドラマに出る機会も増えておりますので、今後は奇妙作品の主演として、声優さんの名前が挙がる日もやって来るでしょうね。

 


『成る』

夏の特別編の4本目。芸人の又吉直樹さんが主演の今作は、ミニマムなコメディ作品で面白かったです。

作品のボリューム上、多くを語ることはできませんが、テンポがいいコメディ作品は大事なんですよね。。。4本編成となっている現状では、テンポが良い、よりもボリューム不足感を抱いてしまうのがもったいない。。。

 


ふっかつのじゅもん

秋の特別編の3本目。ドラゴンクエストとのコラボ作品ということもあり、奇妙クラスタ的にはある程度ハードルを下げて見ていたかもしれませんが、しっかりとしたストーリーラインとコラボ先を意識しつつ奇妙作品としての絵作りが担保された演出のバランスが良く、オチ以外に関しては申し分がなかったです。

ぼうけんのしょ」が消えて主人公とパートナーの記憶もお互い消えてしまったあのオチは賛否ありますが、このコラボがある以上避けられなかったであろうオチでもあったとも思うので、僕としては好意的に受け入れようと。

むしろ、僕が今回、一番ゾクっとしたのが、ぼうけんのしょが消える瞬間でした。秋の特別編は背筋がゾクゾクする、驚きを得ることはほぼありませんでしたが、このシーンはめっちゃドキドキしました。色んな意味で。


。。。石川淳一監督のああいう演出好きなので、奇妙のホラー、もっと撮ってくれないかな(ボソッ)


■想像を超えて面白かった作品

『三途の川アウトレットパーク』

夏の特別編の2本目。『あと15秒で死ぬ』の余韻もそこそこに突入した、ファンタジックな1作。こちらも漫画原作付きのため安心して観れるかな。。。と思っていたら、想像以上にグッとくる作品でした。


主人公たちが来世は人間として戻れると思いきや、其処で出会った少年が亡くなった原因が主人公の凶行だった。。。という展開、そこからの畳み掛けは素晴らしかったです。なんかこう。。。RADWIMPSみたいな感じでしたよね、あれ(語彙力)


この作品、前半はコメディっぽくいくと思いきや、後半は切なさの大洪水。

シナリオ100点、演出100点、とはまさにこの作品のことだと僕は思います。

 


『優等生』

秋の特別編の2本目。『スキップ』がかなり消化不良だったこと、例年のボリュームの大きい作品のハズレが多かったこともあって、事前の期待値は低くしていたのですが、蓋をあけてみれば令和奇妙の中でも印象強く残っていくであろう怪作でした。


序盤から「答えを書かないとやばいことになる」「主人公に世界の平和がかかっている」という種をしっかり撒いておいてからの人類消滅エンド。

主人公が自分の名前をテストに書き忘れる、というケースは想定していたのですが、「テストには裏がある」という展開には一本取られました。


何がこの作品良いって、伏線は「伏線ですよ」とわからないものを散りばめつつ、コメディや感動が良かったため、あのオチを想起させることなく最後に突入できたことかと。

また、多少弛んだ部分はあれども、特別編最大ボリュームの作品が一番面白い作品に仕上がっていたことで、特別編自体が面白く感じられるなあと思いました。


ポップな演出を貫きつつもツボを押さえていた山内大典監督、『燃えない親父』に続いた良作を輩出し、次世代のエース候補に名乗りを上げた坂本絵美先生。お二人の活躍が今後、期待されます。

 


【来年以降の展望・要望】

新型コロナウイルスの影響を受けて、ドラマの制作体制が見直されている昨今。

奇妙作品も煽りを完全に受けていますが、来年以降は、それも少しずつ解消されるのでは、と。

それを踏まえて、来年以降の展望や希望を記して行きます。

 


◆4話編成の各話のバランスの是正

「5話編成に戻してくれ」という意見はもっともですが、現状、製作費が削られているであろう観点から、無理難題を言ってもなあ。。。という気持ちがあります。

そもそも「4話編成が悪い」のではなく、「4話編成のバランス」が悪いことの方が問題だと僕は思っていて、今回も「優等生」がほぼ連ドラクラスの時間を割いていたのに対し、

「金の卵」はレギュラー回のような時間の扱い。このアンバランスさが、中弛みや他の作品とのつながりを悪くしているのではないかと思っています。


せめて、各話20~25分程度の作品にして、4話のバランスを整えてもらいたい。

特に今回、最大ボリュームの「優等生」がハズレていた場合、他の作品では視聴者のモチベーションを維持しづらくなっていたと思うので、来年以降は各話のバランスをもう少し均衡させてほしいな、と思います。

 


◆植田監督からバトンを継げる次のスタッフさん

2000年代から奇妙に関わっている植田泰史監督。単純な年数だけで考えると、初期スタッフの方と比べて遜色のない期間携わっていることとなり、その分、植田監督がメガホンをとる機会も、どんどん減っていくのではと推測しています。

ここで直面するのが、奇妙クラスタ、安心して見れる監督少なくなってきた問題。。。だと。


近年、植田監督を除けば、岩田和行監督の作品は落ち着いて見れるものの、それ以外の方が演出に入った時のガチャ運感は否めず。今回も、山内監督の「優等生」がとても面白い作品ではありましたが、同監督の「金の卵」を見る限り、安定しているとは言い難いです。


久しぶりに奇妙作品の演出をされた石川淳一監督はスポット的な参戦でしょうし、「スキップ」の松木創監督も、ホラー専の監督さんであることから、作品傾向によっては出番がないかもしれません。


僕自身は、今回「優等生」を演出された山内監督は軸となる方だと思っているのですが、どうも長年のファンの方とは相性がいまひとつ良くないので、信頼を得るにはもう二・三作、芯を食う作品が必要だと。もちろん、作品は脚本や演者の方など、いろんなバランスが合わないと良くなりませんが、ファン的には、演出の方の手腕がとっても大事だと思っているので、安心して見ていられそうな方が増えたらいいな。。。と切に願っております。

 


◆「優等生」を教科書に

一時の低迷期を脱した奇妙作品のクオリティですが、近年、話数の削減の影響からか、構成がゴチャゴチャしている作品が増えてきたな、と。

その点では「優等生」みたく、メインストーリーがしっかりしていて、伏線がある場合はその種をさりげなく蒔いておく、このスタイルが重要なんだな、と。

また、近年は演者さんへのインタビューからある程度の展開は予想できるのですが、主演の森七菜さんが「最後まで油断できないな」と感想を抱いていた、というのをあらためて読んで、一本取られたな、と笑 出ている情報を使って観る側を驚かせてくれたところを含めて、「優等生」は、奇妙作品としても優等生的なものになったのではないでしょうか。次回以降も、この作品クラスとまではいかなくても、ストーリーが最後まで破綻していない、消化不良ではない作品を輩出してもらいたいと願っています。

 

 


今年も、奇妙を堪能できた時間は過ぎ、ここからはしばしの冷却期間となります。

でも、ファンとしてはもっとたくさん、奇妙作品を見たい。。。!

来年も放映があることを願っております。

最後に、スタッフさん・演者の方々へ、奇妙を届けていただき、ありがとうございました!

 

PS

今回「悪魔のゲームソフト」や「鍵」で使われていたBGMやSEが再登板されてたの、ファンとしては最高でした!!!!!!!!!