世にも奇妙な物語って難しいんやなと再確認したオタク

世にも奇妙な物語 夏の特別編】が明日、放映されます。オリジナルから原作付きまでさまざまな作品が披露される奇妙ですが、なかでも注目なのが、少年ジャンプ+とのコラボで誕生した奇妙漫画賞の準大賞作品『オトドケモノ』がついに『奇妙』本編で放映されること。

 


当時読めていなかった僕もこのタイミングでようやく読んだのですが。

 


読んでみて面白いな、と。

めちゃくちゃ、面白い作品だな、と思いました。

 


ただ、『準大賞』なのもわかりました。

 


このまま『世にも奇妙な物語』で流れても「何か物足りない」となりそうだなぁ……と。

 


配達アプリという、今の時勢を反映したテーマ。

人間の欲望や怠惰、身勝手さを風刺するようなブラックさ。

どうしようもない、後味の悪いオチ。

 


これを『奇妙』というフィルターを通さずに読めたら「めちゃくちゃ面白いやん!」となるはず。

 


ただ、僕の中で感じる足りない「何か」が、奇妙にとっての重要なエッセンスなのだと思い、ここに想いをしたためております。もちろん、異論は受け付けます。

 


◆拭えない飛び道具感

これまでも奇妙の世界では、怪しいサイトを利用して破滅してしまった住人が沢山います。

 


僕のおすすめは、現実でも疑似サイトが作られる程話題になった名作『密告ネット』です。

ポイントを使って他人の秘密を知った主人公が興味本意で密告ネットにのめり込んでいく様は滑稽で、刺さるところがありました。また、因果応報でかつ後味の悪いブラックなオチは「身に起こるかもしれない」リアリティがあり、それが『奇妙らしさ』に繋がっているように感じました。

 


そう、『世にも奇妙な物語』で重要なのは、「実際に起こりそうな」フィクションであるかどうか、だと思っています。

 


その点では、『オトドケモノ』は異空間に閉じ込められる、という展開となり、急激に「実際には起きなさそうな」フィクションへ変わった気配があります。もちろん、随所にこのアプリと配達員なんか変だぞ?というフックはあったのですが……。

 


あと、この塩梅は記事を書いてても明確に「こうだ!」と言えるものはないな、と実感しているところで、それはもう絶妙な匙加減なんです。

 


例えば、『プリズナー』という作品は、主人公がビデオの世界に閉じ込められる、というお話です。しかし、ビデオの中に閉じ込められる、なんてことは現実では起こり得ないじゃないですか。なのに、起こりそうな気がしちゃう……それもまた、『世にも奇妙な物語』に存在している魅力だなと。特に、非現実感が気にならない……なんなら非現実なのにありえそうだと思わせてくる作品って「オチに至る展開が後出しではない」パターンが多いのではないかな、と。『プリズナー』の場合は、途中からビデオの中の世界に行けてましたから。

 


この勿体無い感、最近だと『不死身の夫』という作品が近いかもしれません。何をやっても生き返る夫が、実はクローンとして何回も生まれ変わっていた、という展開が後半で明かされるのですが、ここはファンの間でも賛否が分かれた部分だったと記憶しております。それならなんでもありじゃん……というね。いっそホラーっぽく展開してくれた方がすっきりした人もいるかもしれません。(とはいえ、この作品のオチはもうひと展開あるので、僕はそれ自体もギミックとして楽しめましたが)。

 


そこで、僕は考えました。

拭えない飛び道具感があるということは……「もうひと展開」を期待する自分がいる……そう、「今の結末」に、納得していないのではないか、と……。

 


◆「もうひと展開」への期待は「今の結末」への不満の証拠?

飛び道具的な展開ではあったものの、奇妙らしい厭な雰囲気が出ていたと感じる作品がひとつあります。それが『友達登録』です。

この作品、簡単に友達が作れるアプリにのめり込んだ主人公が、物語の中盤で「友達を消す = 存在が消える(死ぬ?)」という真実に気付き、今度は「友達になる」側へ回り、「友達から削除される = 自身の存在が消される」恐怖と戦う…という展開です。

『友達登録』というサイトの効力自体はあり得ないものですが、調子に乗った主人公に罰があたる、という点では纏まっていた良作だな、と。

 


実は、『オトドケモノ』を読んでいる中で「アプリを使いすぎる」→「配達する側に回る」みたいな展開があるかも…なんてことを想像しました。しかし、主人公たちはお金(送料)を正当に払っているわけだし、誰かにめちゃくちゃ迷惑をかけているわけではないので、それはちがうな、と。

 


また、主人公たちのやっている悪事も個人的には些事の範疇に感じたので、因果応報ではあるけど、より不条理の方に近いな、と。

しかしながら、『奇妙』で目の肥えた方々は、「もっと過酷な世界に閉じ込められた」住人を見てきていますので、不条理度合いももうひと伸び感じない……。いや、死ぬまであの世界に居るなんて、十分非条理かもしれませんが。

 


まあ、「もうひと展開欲しい!」という感想になってしまったことには変わりなく。ベタですけど、あの女の人が「次の配達員を探していた」という展開でも、僕はOKだったかもしれません(作者さんが、その展開だとベタだから違うオチにしようと考えた可能性もありそうですし、ここは個人の好みだなと)。ただ、オチがすっきり決まっていると、この感情には至らないはず。改めて、決めの難しさを感じました。

 


◆ドラマに期待すること

こう言っちゃなんですが、原作そのままの実写になると、僕的にも、ファンたちの中でも「うーん」という評価になりそうだなと。

それはこの作品がどうこう、というわけではなく、『奇妙』というシリーズの難易度が、それだけ高い証拠なんじゃないかと思いまして。

 


前回の特別編(21秋)だと、『優等生』という作品が良作扱いを受けました。テストに書いた答えが現実となる、面白いお話……かと思いきや、まさかのラストに僕は震えが止まりませんでした。この作品については、「どんでん返し」が決まっていたことも去ることながら、随所に散りばめられていた物語のエッセンスが最後に繋がった瞬間、『これだ!!!』となる感覚がすごくて。

 


でも、長年『世にも奇妙な物語』をリアルタイムで見てきて思うのは、そんな作品年に1本あればいいな、と。

 


そこそこ面白いと思える作品は、年8-10話もあれば半分以上はあるものです。ただ、そこそこ面白い作品って、時が経つとすんなり出てこないんです。

 


ただ、クオリティが一段階上に上がると、すぐ思い出せるレベルになるんですよ。近年の作品だと『三途の川アウトレットパーク』とか『恋の記憶、止まらないで』とか。

 


その点で『オトドケモノ』に感じるのは、名作・良作扱いを受けるか、佳作としてある程度の評価を受けるか、絶妙なラインにいるなあということ。そして何より、原作の面白い部分を昇華させて、奇妙版では「偉そうなこと言ってすみませんでした!!!!」と言える展開になっていることを期待しています。

 


明日の今頃は奇妙な世界がひとときの終わりを告げている頃。ワクワクを胸にして、寝ます。明日が楽しみだ!!!!!